遺言内容の制限

■記載すれば効力のあるもの
法的には、遺言は「法定事項に限りなすことができる行為」とされ、それらの法定事項を一般に遺言事項と呼んでいます。
遺言事項は、分類すると以下の3種類に分けられます。
 1.相続に関すること・・・・相続分や財産分割の方法の指定、特別受益者の持戻し免除、相続人の廃除や廃除の取消し、遺言執行者の指定および指定の委託など
 2.財産処分に関すること・・・遺贈や寄附行為、信託の設定など
 3.身分に関すること・・・認知、後見人や後見監督人の指定など
■記載しても効力がないもの
遺言に法定事項以外のことを記載した場合、それが遺言自体を無効にする内容でない限り、どのようなことを書いても自由ですが、その内容が遺言として法的な効力を持つわけではないという点で、上記の法定事項とは法定的に異なります。
例えば、遺言書に
 ・葬式はださないでほしい
 ・臓器を提供したい
という希望を書こうとしている方もいらっしゃるかもしれませんが、
現行の法律がそうような事項を遺言事項とはしていないので、
少なくとも法的には遺言の意思に任されているということになります。
■遺言事項
・相続分の指定および指定の委託(民法902条)
内容:法定相続分とは異なる相続を希望する場合、それぞれの相続人の相続分を具体的に指定することができる
・遺産分割方法の指定、および指定の委託(同法908条)
内容:それぞれの財産を誰に相続させるかといった指定ができる
・遺産分割の一定期間禁止(同法908条)
内容:株式や不動産、事業資産など、相続開始から5年以内であれば遺産の分割を禁止できる
・相続人の廃除および廃除の取消(同法893~894条)
内容:相続人を廃除する指定ができる。また廃除を取り消したいという場合にはその取消ができる
・特別受益分の持戻しの免除(同法 903条3項)
内容:生前に行った贈与(特別受益分)は相続分から調整されることになるが、遺言によってそれを免除することができる
・相続人相互の担保責任の指定(同法914条)
内容:遺産の分割後にその財産に欠点があって損害を受けた場合、相続人同士は互いの相続分に応じて補償し合うことが義務づけられているが、遺言でその義務を軽減したり加重することができる
・祭祀継承者の指定
内容:生前でも指定できるが、先祖の墓や仏壇などの継承者を指定できる
・遺言執行者の指定および指定の委託(同法1006条)
内容:遺言の内容を誰に実行してもらうかを指定することができる。
信頼のおける人を指定できる
・遺贈(同法964条)
内容:内縁関係にある者や特別に後見してくれたものなど相続人以外の人にも財産を贈与することができる。
その割合を指定する場合(包括遺贈)と具体的に財産を特定する場合(特定遺贈)とがある
・寄附行為(同法41条2項)
内容:財団法人を設立するために財産を提供するなどの意思表示
・信託の設定(信託法2条)
内容:信託銀行などに財産を信託し、管理・運用してもらうなどの意思表示を指定することができる
・後見人や後見監督人の指定(民法839条、848条)
内容:未成年者がおり、その親権者がいないという場合には、後見人や後見監督人を指定することができる
・認知(民法781条2項)
生前でもできるが、婚姻外子(胎児も含む)がいる場合は、その認知を遺言によってすることができる。
認知することで相続人となることができる。
・遺贈に関する遺留分減殺方法の指定(同法1034条ただし書き)
遺留分が侵害された場合、遺贈はすべて一律に贈与より前に遺贈額に按分して減殺されるという民法の定めを変更することができる